Web草思
NHKのウワサ 眞木のぼる×田原茂行
第4回 NHKは政治家の忠犬プードルへ?
公平負担のウソ

 ──NHK受信料の支払い義務化の話が急に政府・自民党から出て、竹中総務大臣の私的諮問委員会もすぐに公平負担の名のもとに同じ声をあげました。前回のお話では、橋本NHK会長は世論を徴することもせず救いの神到来とばかり「義務化賛成」と口走ったそうですね。NHKはこれでますます政治に頭が上がらなくなるのでは、と心配です。
 「会長に21世紀の公共放送について何の理念もないことはこれを見ても明らかですね。口先では「みなさまのNHK」と言っていても本質は視聴者を無視し、改革もせず企業防衛だけを考え、政府・自民党に頭を下げ、真剣に公共放送のあり方など考えていないのです」
 ──5月20日の朝日新聞に吉岡忍さんが論陣を張って、支払い拒否はNHKの番組・報道に視聴者がノーという手段だといって、義務化に反対していました。またそれを議論するなら、NHKが政府・政党・政治家から完全に独立できる仕組みを作ってからにしろとも言っています。同感ですね。
 「彼は、NHKの会長の私的懇談会「デジタル時代のNHK懇談会」の委員として出席していて、NHK側が公共放送の本質的改革を目指さずに、デジタル時代の新技術による付加サービスへの賛同を得ようと腐心していることに、苛立ちを持っているようですね。他の委員も、政治家や官僚や財界の立場ではなく、視聴者の立場から改革を考え議論し提言しようと言っているにもかかわらず、NHK側はぬらりくらりです」
 ──私の奥方は、自分の意志でNHKを支えようと受信料を長年払ってきたので、支払い義務にするなら、反対に払うのをやめようなんて、つむじを曲げています。
 「私の家内も、いよいよとなったら支払い停止だと言っています。そもそも、契約義務はあっても支払い義務を伴わなかったのは、視聴者の自発的意思に支えられた、視聴者のための放送であることを願う理念の現われでもあるのです。支払い義務がないのを法の欠陥と考えるのは間違いです。ですから現在まで、何度か支払い義務化の法改正案が国会に提出されながら廃案になり、そのまま現在まできたのです。それは、NHK首脳陣も、NHKの一番の支持者からの猛烈な反発を恐れてきたからです。あの海老沢前会長時代でさえ、受信料収納率のあまりの悪さに当時の片山総務大臣から義務化の話が出たとき、止めるように懸命に働きかけたという話を聞いています」
 ──ほお、そうですか。しかしなぜ今、政府・自民党は義務化を持ちだしているのでしょう。
 「それは、あなたの言うように、NHKのさらなる忠犬プードル化が第一の狙いでしょう。しかも、問題の本質に手をつけずに改革したような顔もできる。もう一つは、目下国策として無理やり進めている地上波テレビのデジタル化の完全移行があと5年に迫っています。その尖兵となっているNHKが資金難に陥って計画に狂いが生じないようにしたいのでしょう。そこで一挙両得の妙手と思いついたのでしょう」

NHK忠犬化のほんとうのねらい

 ──デジタル化の話はまたの機会にうかがうとして、さらなる忠犬化計画について聞かせてください。
 「今の政党・政治家は如何にメディアをコントロールするかが政権の維持・政策の実行に欠かせないものとわかっています。「小泉劇場」などにうかうかと乗ったメディアの愚かさの結果を見ればお分かりでしよう。その中心にNHKを据えたいのです。しかし、NHKは不祥事以来、政治からの自立を要求する視聴者の声に色目を使いはじめたので、以前のようにツーカーとゆかなくなる恐れも政府は感じているわけです」
 ──ツーカーですか。
 「そうです。先般NHK教育チャンネルで政治家の番組介入が話題になりましたね。それが実際にあったかどうかは別にして、毎年国会がNHKの予算審議をするために、NHKは「ご理解をうるため」に政治部記者経験者を動員して、議員会館を駆け巡ります。その際インフォーマルな形でさまざまな圧力をかけられ、それがNHK内部に浸透してゆくのです。放送前に会ったか会わないかということよりも実はその方が重大なのです」
 ──そういえば以前読んだ島NHK元会長の『シマゲジ風雲録』という本に、当時の中曽根首相はしばしば彼を呼び、メモと赤鉛筆を手にNHKの放送を批判した、と書いていました。島氏も政治部記者でしたね。
 「それが本当にあったかどうか密室の話ですからわかりません。しかし中曽根氏は否定していません。それに、島氏はそれをNHK内で公言し、他の有力政治家との密接な関係も利用し、NHK内で覇権を握っていったのはたしかです」
 ──なるほど、NHK内でも政治との関係を利用しようとする人も出てくるわけですね。海老沢前会長も自民党最大派閥と密接な関係にあったといわれていますね。
 「彼が会長時代に受けたインタビュー(文藝春秋)で、「はかって、はかって、会長になった」と公言しています。それは政界との関係を隠微な形で誇示しているのです。
 また、彼の側近で国会工作のトップをしていた人物も元政治部記者で、自民党の幹部と親密で寝室まで入れるほどだとNHK関係者が自慢するのを聞いたことがあります。番記者をしていると取材対象との距離がわからなくなり、秘書化して政治に参画しているような気分になり、また政治家は情報操作ルートとして彼を使う。それが政治部記者の典型の一つです。NHKではそのような記者が尊重され局内権力になってゆくのです」
 ──現在、毎年予算を審議することだけでもそのような状態なのに、支払いが義務化されたらその体質はどうなるのか恐ろしいですね。
 「政府・自民党が真に公共放送の存続を願うなら、まずは、予算の毎年の審議をやめ、NHKを政治から独立した存在として保障すべきです。支払い義務化ではありません」
 ──私もそう思いますが、英国の公共放送BBCの受信料は、罰則までついた支払い義務だそうですね。
 「そうです。しかし、日本と英国ではジャーナリズムの歴史が違います。BBCは、相手が保守党であろうが労働党であろうが、公正中立と国民の知る権利を守るためしばしば政府と対立し戦ってきた長い歴史があります。そのために会長が何回か辞任しています。それで視聴者の信頼を築いてきたのです。しかも、視聴者への説明責任を果たすため、積極的な情報公開を行い、批判にも率直に答えています。NHKにはそれだけの歴史も信頼もまだありません」
 ──NHKの忠犬化の末に、政治は何を狙っているのでしょう。
 「狙いは、憲法改正でしょう」
 ──憲法改正!?

草思社