Web草思
あなたも恋愛小説を書こう──ラブという謎 内田春菊
第5回 「出逢いが欲しいんでしょ?」
lovestory04.jpg 10月に最高潮になるヴァソプレッシン受容体(快感を感じるための物質)の量がいっきに落ち込み、一年中で最も鬱病が多いらしい11月。恋愛のこと考えるのも少し息切れしてきたような……。それというのも、私はまた一つ自分の「恋愛描くのに向いてない」点に気づいてしまったのです。

オーガズムマシン

 今「ゲラッパ!」と脳内で叫んだ人、ちょっと好き。でも少し違う。この機械は実在するものです。ほんとの名前はオルガスマトロン。ある女性の背中の痛みの治療に電気を使っていたお医者が、偶然にも「その部分」を刺激してしまい、その患者にオルガスムスを起こさせてしまったことから発明された。なにしろボタン一つで女がイくんですよ、あなた。
 全女性の32%は、無オルガスムス症(一度もイったことない、あるいはちょっとあるけどその後ダメ)なんだそうです。それがなんとボタン一つで! これを発明した科学者は、すんごい商品出来ちゃった、大もうけだ! と思ったそうだ。しかし、試作品のテストのためのボランティアを募集したところで、唖然とするはめに。
 なんと、協力者の応募が、一人しか来なかった!(そのあとかろうじてもう一人)
 今、「なんで?」と思った人のほとんどはきっと男性なのだと思う。いや、私も思ったけど。しかし、事実らしいです。
 この話は、文春文庫『オルガスムスのウソ』(ロルフ・デーゲン著)に載ってました。1センチ5ミリくらいの厚さの文庫で、字面もびっしり、その一冊まるごとオルガスムスの話だらけ。すんごく面白かったので、同じ著者(で、同じ文春文庫)の『フロイト先生のウソ』を今読んでますが、つまり、女の人は、電極付けられて、ボタン一つなんかでイきたくないんですね。
 いや、でもさ、とにかくボタン一つでも、イったことない人はとりあえず経験してみりゃいいのにねえ、と最初私は思ったのですが、でも、自分がまだオルガスムスを知らない立場だったらどうしただろうか? やっぱ怖いかな? 30年以上も前のことなので、よーく考えたらやはりわからないのでした。

道具じゃダメ?

 友人に、まだオルガスムス経験のない人がいて、少し前、色々話したりもしてたのです。
 「こうすれば手っ取り早いよ」
 ってのも教えた。でも、そこへまっすぐは行かないんですよ、彼女。あ、それはやはり話が道具系だからかもしれないんだけど。
 やっぱし、いくらそれでとりあえず経験できそうとは言っても、彼との関係が気まずくなりそうなことは選択したくないのかなあ。
 そりゃそうか。まあ、そうだよな。
 でも、面白いのに、オルガスムスって! などと考えてしまう私はやっぱり、恋愛ものを書くのに向いてないだけでなく、「嫁」とかになって生きていくのにもやっぱし向いてなかったのであろう。
 他にも、女性は確かに二度三度と続けてオルガスムスに達する能力があるが、かといって快感そのものが男性より深いわけではないとか、普通に暮らしているときにセックスのことを考えたりする頻度は男性よりずっとずっと少ない(だから女はほんとは淫乱ってのも男の作ったファンタジー)とか、面白い話満載。しかし、一般的な女性にとってはこの本を最後まで読むこと自体、体力的に難しいのかもしれません。

ホストに嫉妬?

 ものすごく久しぶりにホストクラブに行きました。最後に行ったとき第三子が赤ん坊だったから、8年近く経ってる。まず、ここから坂登ったとこだったよな、って角まで来てびっくり。ホストの写真だらけ! 正確には、ホストクラブの看板だらけ! 乱立!
 「なんか、すんごいことになってるね」
 それも、私の知っている店の人たちと違って、看板に並んでいる男の子たちは茶色い長めの無造作ヘアで細眉、つまり「イマドキ感」に溢れていて、あんまし笑えない(笑いに行くわけではないのかも知れないが、私はどうもホストクラブ行きを観光のように思っていたようです)。
 こういうことになっていたとは……としばらく並んだ看板を口開けて見上げていたが、ふと正気に戻って私は、
 「どうする? こういう感じの人たちのところが良かったらこの看板の中のお店に行く?」
 と聞いてみた。今回連れて行こうとしている女ともだちAちゃんはとっても若いので、こういう人たちの方がいいのかもしれない。
 「でも、どんな店かわからないので、内田さんの知ってるお店がいいです」
 「知ってるったって、行ったことある程度なのと、老舗だから変なことはないだろうってくらいなんだけど」
 「はい、安心出来るほうが」
 そう言いながら、Aちゃんは内心、
 「話すことなんてないんだろうなー、気まずい感じなんだろうなー」
 と心配していたのだという。

何故、ホストクラブなのか

 以前のこのweb草思の連載で書きましたが、当然ながら飲み屋さんのほとんどは男のために出来ています。
 たとえ仕事相手の人が良かれと思って私を飲みに誘っても、そこの女の子が私の職業などを珍しがってこっちがサービストークして終わり。そんなのちっとも楽しくないのであります。
 ほんとにさあ、いつかはどっかのカラオケスナックの女の子が何か小さな失敗をして、
 「お詫びに体で払いまーす」
 って私の席全員に言ったときには殺意を覚えたね。周りの男たちは喜んでいたようだが、むっとした私の口からはつい、
 「いいの? 私バイセクシュアルだよ」
 という言葉が飛び出てしまい、そのバカ女は気まずそうにしてた。女の客をいないことにするんじゃねえ!! 普通の飲み屋の人たちは、そこで女が飲み代を払うことだってあるってのがわかってないからイヤ。女ともだちの接待なら、それがわかってるホストクラブの方がいい、と私は思っているのです。
 個人的には美味しい食べ物があって、接客とかない居酒屋なんかの方が好きですが……。
 でもまあ今回は理由があったの。Aちゃんはもうすぐ結婚なのですが、相手の彼がAちゃんにいけない油断をし始めたらしく、ここんとこ淋しそうな顔になってきた。なので、彼とAちゃんの間の空気を入れ替えた方がいいのでは、と私が勝手に思って、この企画となったのでした。

前例がたくさん

 最初はそんなこと知らなかったのだが、ホストクラブに行くと、女ともだちの彼や夫が、猛烈に怒るのよ。そりゃあもう、すごいよ。
 「独身最後だからホストクラブ? なんでそうなるの? ちょっと信じらんないんだけど」
 と婚約者に責められて、口論のあげくぶっちぎって出てきたIさん。
 あとからホストの名刺が見つかって夫に責められ、プチDVまで振るわれて、次に行くときは、
 「夫に黙って来ました。墓の中まで持って行きます」
 と言ってた(そこまでして来いと誘ったわけではないのだが)Kさん。
 Мさんに至っては、話が出ただけで、
 「俺はあいつらの手口全部わかってんだよ!」
 と、自分はキャバクラよく行く夫が言い出したので、連れてくのは止めました。お金払ってわざわざ恨まれんのヤです。しかしなんで? なんで自分は女の子のいるとこ大好きなくせに、女が行くとなるとそこまでするの? ……いや、するんだよな。まあ、しない人もいます。しない人は、
 「いいなあ。どんなとこなのか自分も見てみたい」
 って言ったりするので、私はそれでユーヤを連れてったことある。なんか、野球好きなホストと話しこんでたぞ。今回もスタッフムネくんが一緒だったから、座ってすぐに付いたホスト二人と、
 「同い年~」
 って盛り上がってた。
 しかしホストに嫉妬する男は、
 「自分もホステスのこと好きになっちゃってるから」
 と告白しているようにしか見えないんですけど。お金払うのは私なんだから、
 「そんなことにお金使うの?」
 って怒りじゃないしね。
 その後、その日に合流出来なかった某大手代理店の担当者マイちゃんと、私の芸能の方のマネージャー・ヨッシーとAちゃんでもう一度行きましたが、全員初対面のため、ホストたちの横で名刺交換。笑えた!

8年前との違い

 そのホストクラブは昔、一部(12時まで)と二部(12時過ぎから朝方まで)に分かれていて、最初は二部しか行ったことなかったの。私も今みたいに六時半起き生活じゃなかったですし、ご飯食べて少し飲んでやっとそういう気になってからしか行けなかったし。
 二部の男の子たちの方が若くてプロ意識が希薄で、割と迂闊に色んなこと教えてくれたので取材としても良かった(木野花さんとか取材しまくってたなー)。
 「一部の人は違うから」
 とよく言われました。
 ところが風営法が変わって、深夜の営業が出来なくなってしまったという。というのは最初ユーヤが教えてくれたのだが、ムネくんも、
 「深夜がダメなら、夜が明けて朝になってからという強硬手段に出ている店もあるんだそうです」
 と言う。体壊すよ! と思ったが、私たちが行った店は、12時までに一部のホストも二部のホストも全部一緒に出勤する(正確には一時間くらい出勤時間にズレがあるらしい)という形を取っていました。
 それはどういうことかというと、沢山どんどん人が付く。三時間で10人くらい付く。それでもトイレに立つと、行き場のないホストがその側の空席にびっしり待機しているのだ。悪いけど、怖!
 なのでトイレに行くたびにどんな客もその視線を浴びまくる気分に……。トイレ、行きにくい……。
 さらに、名刺くれるだけでなく、電話番号を聞かれる。これが、今まで一度もなかったのに、次々と。あとで聞いたら、聞かれたのはほぼ私だけだった。何故!? さすがに48歳になったら「営業するならこの客」って顔になったのだろうか!? 他の人はみな20代とかムネくんだったし(ムネくんとAちゃんがペアだったらAちゃんに営業するわけにはいかないなと思ってた感じもある。彼女をはさんで座ってたし)。それともやっぱ男の子が接客する店が増えて大変になってきて、私みたいに布の斜めかけバッグの金のなさそうな客にも営業しとこうってことに?
 名刺には、自分のケイタイ番号が書いてある人と、店の番号しか書いてない人がいる。もちろん番号聞いてくるのは前者の方。何か、いろいろと人によって違うのであろう。
 「ケイタイの番号教えてください」
 「あとでかけます」
 とか言ってお茶を濁すと、中には、
 「だってここへ来たってことは出逢いが欲しいってことでしょ?」
 と言う人もいる。
 「誰が好きですか? はっきり言ってもらったほうがいいんで」
 ってのも二回くらい聞いた。
 「だってまだ会ったばかりじゃないですか」
 とか言うと、少し「?」って顔される。なんかほんと、昔と違う!
 昔、一、二回だけ指名した人、一人だけいたんです。しかし、たまーにしか行かないため、いつだかいなくなっていた。連絡先なんて知らないのでそのまま。
 「あの人辞めたんですか?」
 と聞いたら、
 「誰? ああ、あのポーッとしたやつね」
 と言われてしまったので、そういうタイプだったのかも知れないが……(源氏名は霞だったかも。もしかしてぴったし? 顔は鹿賀丈史さんに似てた(女ともだち談)らしいんだけどな。前歯に虫歯あったけど)。あんまり話もしなかったしな。そんなに気が合ったわけでもなかったのか。
 もう一人、一部も二部も続けて働いていた、沖縄出身の細川さんって人があまりにも人として良くて、
 「この人なら女ともだちの接客を安心して頼めるわ」
 と思って自分の名刺(その頃はあった)をあげたことがある、そうです。なんで「そうです」かと言うと、酔っ払ってて覚えてないからです。翌日、細川という人から電話がありましたと当時の会社の人に言われ、私はなんと第三舞台の細川さん(現・劇団新☆感線社長)に電話したのです。
 「電話くれた?」
 「ん? いや、してないけど、久しぶりに話せて嬉しいよ」
 あれ?
 あとで一緒だったユーヤに聞いたら、
 「名刺あげてたよ。なんであげるのかと思った」
 と言われました。その細川さんもまもなく沖縄に帰ってしまったそうで、今どうしているかわかりません。って何この色気のないホスト話。あっ! でもこのユーヤのセリフ、うっすらやきもち妬いているような気もする! あーでも、自分がいるのに目の前で名刺渡されたらそりゃむっとするかもな。失礼しました。
 しかし8年前よりさらに店内は明るくなっていて、インテリアも石丸電気シャンデリア売り場(あるのか)のようであり、さらに所狭しと光り小物が配置されていて、自分の普段の生活を忘れる場として熟成されてきていました。
 「思ってたよりずっと楽しかったです!」
 というAちゃん(会話が続かないとか、ねっとり営業されるとか、いろいろ心配していたらしい)の表情も明るく、その後彼ともいい感じに緊張感が戻ってきたようで、めでたしめでたしです。私たちは駅までおしゃべりして歩き、生活感を取り戻すために電車で家に帰りましたとさ。
(了)

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